3.2 地球誕生のドラマ

皆さんが生まれたときの様子を知るにはどうしたら良いだろうか。両親に「自分が生まれたときはどうだったか」と聞いてみるのも一つの方法だ。両親に聞けないときは、友達の誕生の様子を聞いて、自分の誕生のことを類推することも可能だろう。両親にも友達にも聞けないときには、自分の生まれたころの新聞や雑誌をみて、その当時の様子から自分の生まれた時代を考えることも出来る。

地球の誕生の様子についても、科学者は同じようにして調べるのであるが、地球を産んだ両親から直接話を聞くことは出来ないので、科学の力を借りなければならないことになる。

 

3.2.1 地球の年齢

まず地球誕生の様子を探るために、最初に地球が今から何年前に生まれたかを考えてみよう。誕生の時期を知ることが大切なことは、人間の場合と変わりはない。でもこれが結構難しい。

地球の岩石のなかで最も古い岩石がカナダにある。この岩石の年齢はおよそ40億年だ。このような古い岩石の年齢は、それに含まれるウランや鉛の量を測定することから知ることができる。それには下の図に示すような方法によるものである。

図3 放射性元素ウランがその量に比例して鉛に変化することから岩石の年齢を知る方法の概念図

ウランという元素は放射性元素と言い、原子核が自然に変化して他の元素にかわっていく性質がある。このうち、ウラン238やウラン235は、それぞれが固有の変化の係数を持ち、かつそれぞれの量に比例した速度で鉛206や鉛207に変わっていく。したがって地球が誕生したときにどれだけ、鉛206や鉛207という原子がどれだけ岩石の中に含まれていて、現在はどうかということが分かれば、その鉛の量の増え方でこの岩石がいつ生まれた物かが分かるのである。

しかし、地球上のもっとも古い岩石の年齢は地球の年齢と同じになるとは言えない。隕石や月の岩石などの年齢を参考にすると、どうやら地球の年齢は46億年ということが分かる。地球の誕生時に出来た古い岩石は、風化作用や浸食作用や後で述べるプレート運動などによって地表面から消えてしまったものと思われる。

 

3.2.2 地球が生まれたときの様子

地球が生まれたときの様子を記録したものは、残念ながら地球上には見あたらない。しかしそれが月の岩石に記されている。これがどのようなものであるか、次に述べることにしよう。

アポロ宇宙飛行士が月から持ってきた岩石を調べてみると、月の誕生した時は今から46億年前。月の岩石が地下のマグマから出来たのがおよそ40億年前から30億年前までの間だったということが分かった。しかも古い時代に作られた地域ほど数多くのクレーターが見られ、激しい隕石(小惑星や彗星も含む)の衝突が40億年前には起きていたことが分かる。

もし月のような小さな天体が、誕生したときに冷えて冷たい天体であったとしたら、そこからマグマが出てくるほどの高温の天体になるには、どうがんばっても40億年以上もかかることが理論的にわかる。それに対して事実は誕生直後からマグマの活動が月に起きていたことを示している。月が低温で誕生したと仮定すると、月の岩石の特徴を説明できないのである。しかもマグマの活動が10億年も続いているというのだから、マグマの規模も大規模なものだったに違いない。多くの科学者は月が生まれたときには、月はマグマの海で被われていたに違いないと考えている。

月がこのように高温で誕生したのなら、同じように地球も高温で誕生したに違いない。地球の方が月よりも大きくて、重力も強いので地球を作った微惑星(太陽系誕生期にあったと推定される惑星のもとになるような小天体のこと)も地球の表面に激しく衝突したと考えられるからである。そうだとするとその微惑星の衝突で地球は熱せられ、月と同じように地球もマグマの海で被われていたのであろう。月や他の惑星の表面にみられる無数のクレーターが示すように、地球誕生期には微惑星や隕石の激しい衝突が見られたに違いない。

岩石の中に含まれていた水や揮発性元素は蒸発し、原始の大気を作り、その大気が冷えるにつれて水蒸気が雨となり、地球の海をつくることになったのであろう。表面が冷えるにつれ、マグマが冷えて岩石を作り、これが原始大陸となったのであろう。地球が誕生してから10億年の間に何が起きていたか、それを直接物語る資料は地球上にはないけれども、他の惑星を調べることによって地球誕生期の様子を推察できるのである。