3.3 大地も動く

3.3.1 大陸移動説

世界地図を拡げてみて、大西洋をはさむ南アメリカ大陸とアフリカ大陸の形を見て貰いたい。南アメリカの東海岸とアフリカの西海岸の海岸線がとても良く似ていることに気付くであろう。

図4 南アメリカとアフリカの海岸線がよく似ていることを示している[1]

今からおよそ100年前、ドイツの気象学者アルフレッド・ウェゲナーはこの海岸線の類似性から、これは昔この二つの大陸がひっついて一つの大陸だったものが、その真ん中あたりから割れて、二つの大陸となって動き始め、現在のような姿になったのではないかと想像した。この想像はその後の研究によって確かめられ、大陸が移動することは疑いを入れない事実だろうと考えられるようになった。

近年では、南アメリカ大陸とアフリカ大陸だけではなく、北アメリカもインド大陸も南極大陸もオーストラリア大陸も、みんな2億4000万年前には一つの巨大な大陸だったと信じられるようになってきた(図4参照)。「動かざるごと大地のごとし」と考えられたものが、地球の歴史の時間で考えると、結構自由に動き得るものであるという驚くべき結論は、様々な証拠から得られたものである。ここでは二つの証拠についてのみ取り上げる。

まず最初の証拠は、大西洋や太平洋の真ん中にある中央海嶺と呼ばれる地形の発見から得られた。特に大西洋のアメリカ大陸とアフリカ大陸のほぼ中央に海底火山がつらなる中央大西洋海嶺というものがある。この地形を詳しく調べてみると、これはいかにも大陸を引き裂いた割れ目の跡のように見えるのである。このような割れ目の地形が大陸を取り巻いており、これらはそこが大陸の引き裂かれた場所、新しい海が生まれている場所という考え方を採らない限り説明できないものだった。

二番目の証拠は岩石に記録された地球の磁気から得られたものである。地球の岩石は弱いけれども、いずれも小さな磁石のように磁気を帯びている。この磁気はその岩石が作られたときに、地球全体の磁石の影響で磁化されたものである。一方、地球の磁場は極に近いところ(緯度の大きなところ)では、伏角が大きく(磁針が下を向く)、赤道に近い緯度の小さなところでは伏角が小さい。そこで岩石の磁化の方向を調べることによって、この岩石の生まれた緯度を知ることができる。色々な大陸の、色々な時代の岩石の時代を調べてみると、この岩石に記録された磁気から大陸が移動していることが分かる。

地磁気から得られる証拠のもう一つは、海洋底の岩石に記録された磁気にある。中央海嶺では、溶岩が噴出して新しい玄武岩が生まれている。この玄武岩には地球の過去の地磁気の歴史がテープレコーダーのように記録されていることが分かったのである。これは次のような事情から起きた現象である。

まず最初に「地球全体の磁石の向きが時々ひっくり返る」ことがあることを、述べておかなければならない。すなわち現在の磁石の方向(北極がS極で、南極がN極)が、かって何度も反対になっていたことが分かっているのである。なぜそんなことが起きるのかについては、まだ良くは分かっていないけれど、地磁気反転の歴史は陸上の岩石の研究からよく分かっている。一方、海嶺の周辺で海底の磁気の様子を調べると、磁気の方向が現在と同じ向きになった地域やその反対の向きになっている地域が整然と(海嶺軸に平行に)帯のように拡がっていることがわかった。昔の地球の磁気の方向をあらわすものが、海嶺から遠い場所に見つかり、海嶺に近い場所ほど現在に近い磁気の方向となっている。この海底磁気の変化の様子は、ここで新しい玄武岩の地殻が生まれ、それが海嶺軸から左右に拡がっていること考えることによって、きれいに説明できる。海嶺で作られる岩石の磁気はその時の地球の磁気を記録し、テープレコーダーのテープのように左右に移動しつつ地球磁気の歴史を記録し続けていたのである。

 

3.3.2 プレート・テクトニクスと離合集散する大陸

100年ほど前にアルフレッド・ウェゲナーによって提唱された大陸移動説は今から50年ほど前から、様々な地球科学的方法によってその考えが確かめられてきた。さらにその研究が進むにつれ、大陸も海洋底もともにダイナミックな変動を遂げるものであると考えられるようになった。その考え方をプレート・テクトニクスと呼ぶようになった。すなわち、現在の地球の表面は10枚ほどの板のような岩板(これをプレートと呼ぶ)で覆われており、このプレートの運動が、地震や火山などの活発な地質現象を引き起こしたり、大規模な大陸の移動も起こすというのである。

ここではプレート・テクトニクスと呼ばれる考え方のもとになった、地震学から得られた図5をお見せすることにする。この図の中央にあるのは太平洋の地下を表すものと考えて欲しい。表面を覆っているのがプレートと呼ばれる厚さ100 km足らずの岩板(リソスフェアと呼ばれることもある)である。その板の上に書かれている矢印が板の動いている方向を示す。中央部分にある板の割れ目が中央海嶺に相当する。ここではマグマがわき出して、両側の板を左右に押し広げるかのように見えている。ここでは新しい岩石がプレートに付着してプレートを拡大している。一方、海嶺で作られたプレートは太平洋の場合は東西に広がり、大陸の端にきてマントルの下に沈み込む。プレートがマントルに沈み込むことによって、海が深くなり海溝ができる。日本海溝はこのように太平洋のプレートがマントルに沈みこんでいる場所である。

図5 プレート・テクトニクスの概念図[2] 

この図が示しているように一枚のプレートの境界は、海嶺、海溝の他、プレート同士が横ずれにすれ違っている断層(トランスフォーム断層と呼ばれている)の3種類からなっている。このようなプレートの境界では大なり小なり地震が発生し、プレート相互の運動があることを示している。日本のようにプレートがマントルに沈み込む場所にあるところでは、時に大きな地震に見舞われるが、これもプレートの運動によるものである。

プレートの相互の運動はごく最近までは、地震学や地形学、地磁気学から推定されるものであったが、現在ではこの動きをGPS(全地球測位システム)という人工衛星を使った精密な位置決定方法を使うことによって、直接に測定できるようになった。これによると確かに太平洋プレートはユーラシア大陸にむかってほぼ1年に約10cmという速度で動いていることがわかる。

さてこのように地球の変動をもたらす仕組みがわかってみると、現在の大陸配置をプレート・テクトニクスに従って昔の姿にもどすことができる。このようにして得られた過去の大陸の配置を図6に示した。

図6 2億4000万年前までの大陸の配置[3]

この図から、2億4000万年前には、南北アメリカ大陸、アフリカ大陸、インド大陸、オーストラリア大陸、南極大陸が一塊の超巨大な大陸であったことがわかる。このような超巨大大陸のことを「パンゲア」と呼んでいる。地球の歴史からすると、たった2億4000万年前というのは、本当に最近の事とも言えるが、このように現在の地球の姿から予想もつかないような大陸配置だったことがわかる。地球上に一つの大洋、一つの大陸しかなかった時代があるのである。恐竜はこのような時代の地球に住んでいたのである。

さらにプレート・テクトニクスの考え方と地質学にしたがって、このパンゲア超大陸の前を想像することもできる。そのようにしてみると、約4億年前には再び大陸が分散していた時代があり、4.9億年、7.5億年前にはパンゲアのような大陸が集まっていた時代もあったらしいことがわかる。どうやら地球の歴史の上ではこのような大陸の離合集散が何度もあったと思われる。「動かざること大地のごとし」ではなく、「大地は海に浮かんだ葉っぱのように、マントルの上を漂流する」らしい。

図7 7.5億年前までの大陸の移動をさかのぼって見たもの[4]

 

[1]Bullard, E. G. , J. E. Everett, and A. G. Smith, Phil. Trans. Roy. Soc.,London, A-258, 41-51, 1965.

[2]Isacks, B., J. Oliver, and L. R. Sykes, J. Geophys. Res. 73, 5855-5899, 1968.

[3]Dietz, R. S., and J. C. Holden, J. Geophys. Res., 75, 4939-4956, 1970.)

[4]熊沢峰夫、伊藤孝士、吉田茂夫(編)「全地球史解読」、東大出版会、p.182の図3.3.15、2002