3.5 地震と火山

プレートの境界である海嶺では熱いマントルが上昇し、海溝に沿っては冷たいプレートがマントルの中に沈みこんでいる。変動している地球のほとんどの動きはその境界に集中している。その一つである地震は、海嶺では比較的浅く、小さいが、海溝では地殻からマントル深部にいたるまで頻発する。地震は地殻やマントルで起こった破壊であり、プレート境界で発生するということは歪みと応力がそこに集中していることを示す。もうひとつの変動は火山噴火である。海溝に沿う火山列島は島弧であり、爆発的なマグマの噴火や大規模な火砕流が起こる。海嶺も火山であり、マグマ噴出量の多さでは海嶺は島弧の噴火を大きく超えている。プレートの内部にも火山があり、そのマグマはプレートより深い所のマントルに起源がある。このように地震と火山とは地球内部の窓と呼ぶことができる。

 

3.5.1 プレート・テクトニクスと地震・火山噴火

プレート運動は実に単純な動きである。ミルクのかわのように皺が寄らないので、地球の表面に沿って海嶺から海溝まで移動するだけである。ただ、水平な面の上ではなく、地球の形は丸いので、表面に沿って動くということは、ボールに手を当てて滑らすと判るように回転するのである。

地球の表面部分は約10枚程度のプレートに分かれている。その境界の海溝と海嶺は地球を野球ボールの縫い目のように取り巻いている。プレートの境界はそれぞれのプレートが互いに離れたり、沈み込んだりしているので、地殻やマントルに大きな変化が起こる所である。海嶺では1000度を越す熱いマントルの岩石が海面下1 km程度まで上昇している。海溝に沿っては冷たい100度程度に冷えた岩石がマントルの中に斜めに沈みこんでいる。このようなプレート境界の運動が地球のほとんどの変動をもたらしているのである。

地球に起こる変動のうち頻繁に起こる大きなものは地震と火山噴火だ。日本列島はちょうどプレートの沈み込み境界に位置しているので、いろいろな地球現象が集中して起こる。地震はその最たるものである。日常的に感じる地震の揺れは大きいもので震度階で7まで達している。ここ数年で6強という非常に強いゆれを日本列島は何度も経験した。

地震はプレートの境界に沿って密集して起こる(図9)。海嶺では比較的浅い5 km程度までの深さの小さい地震が頻繁に起こるが、一方海溝沿いの境界では10 km程度の浅い地殻内部から600 km程度の深いマントルに至るまで頻発するのである。このような地震は沈み込むプレートの境界と内部におこっている。地震によるゆれは地震の規模が大きく近いと大きいものである。反対に遠ければ大きい地震でも感じない。例えば最近の中越沖地震でもすぐ上の柏崎では6強であったが、博多では感じられなかった。プレート境界沿いの地震では、浅い10-50km程度の巨大な地震が大変被害を大きくするのである。そして阪神淡路大地震のようにプレート境界から少し離れた内陸で起こる地震もその規模と近さから恐ろしいのである。

図9 地球上の地震の分布

日本海溝や伊豆マリアナ海溝などの沈み込み境界で起こる地震は深い所まで起こり、大西洋中央海嶺などの拡大境界で起こる地震は浅い所で起こる。

内陸の地震は少し変わっている。それは地震の深さが地殻の浅い部分に限られている事だ。大体10-20 km程度の深さに大きな地震がおこる。また、日本列島ではほとんどの地域に人が住んでいるので、その直下10 km程度でおこると、たとえ小さい規模でもゆれは大変大きくなってしまう。

プレートの沈み込み境界に沿って地震が多発している面がある。地震の多発する面が、日本海溝からアジア大陸の下にむかって斜めに入っていることが初めて見つけられたのは1930年代のことである。現在ではこの面を発見者にちなんで和達・ベニオフ面と呼んでいる。この発見は後に1968年になってプレート・テクトニクス建設の中心的な事柄となった。

プレート境界に起こる変動の一つに火山噴火がある(図10)。太平洋を取り巻く、いわゆる環太平洋火山帯というのはプレート・テクトニクスが建設される前の用語であるが、実はそれはプレートの沈み込み境界に沿う火山帯であったのである。海溝は、太平洋をぐるりと取り巻いて南アメリカから北アメリカ、アリューシャンから日本列島、伊豆、マリアナ、トンガからニュージーランドまでつながっている。海溝から陸側に約200 kmほど離れて、点々と火山が並んでいる。海底でもほぼ50 km程度の一定間隔で活動的な火山が並んでいるのだ。海溝よりにはそのような火山はない。このような火山の並びを火山前線と呼んでいる。アメリカ西岸のカスケード山脈や南アメリカのアンデス山脈もこのような火山の列なのだ。

図10 地球上の活動的な火山の分布

海溝から200 kmほど離れた火山フロントから大陸側に火山が分布する。また、海嶺軸に沿う影のついた部分は活動的な拡大軸に沿うマグマ活動域である。

ところで、もう一つのプレート境界である海嶺ではどうだろう。海嶺も火山である。海嶺の中心に沿ってたくさんのマグマが噴出している。ほとんどは深海底であり、爆発的な噴火をしないので目立たないのであるが、陸にあがった海嶺はアイスランドだ。そこでは火山噴火が頻繁に起こっているのである。火山噴出量の多さではこの海嶺は島弧の噴火を大きく超えている。

ハワイ島は火山島である。全部が火山活動で作られたものである。その形は底面200 km、高さは海底から10 kmの平たい円錐形である。富士山は高さ3.8 kmだが、火山噴火でつくられた富士山の高さは2 km程度である。そして底面直径は20 kmなので、ハワイ島火山の総量は富士山のなんと500倍となる。そしてハワイからカムチャッカ半島にかけて北西に向かって点々と続くハワイ・ミッドウェー・天皇海山列はハワイ島のような火山島が連なってできたものである。これらのプレートの内で噴火した火山をプレート内火山と呼んでいる。地球の表面付近の変動はプレート境界で起こるが、プレート内部は変動がほとんどないので、ハワイ火山などの噴火の原因はプレートより深い所のマントルに起源がある。つまりプレート内火山は深部マントルの窓と呼ぶことができる。

【コラム1】ちょっと一息 固体も流れる

水やミルクのような液体が流れるのはわかるが、鉱物や結晶が流れるというのはどうしたことだろうか。買い物ポリ袋を強く引っ張ると伸びてしまう。ものが流れるというのは、そのように引っ張ると自由に伸びっぱなしになるようなことなのである。では結晶はどうか。例としては針金がいい。針金を手にとって曲げようとすれば、簡単に曲がってしまう。アルミや銅では多少太くても簡単に曲げられる。それらの針金は結晶の集まりである。そして多結晶体のまま曲がっている。線を少し腐食させて顕微鏡で見ると鉄の結晶が伸びてしまった様子が見られる。マントルや地殻を造っているのは岩石であり、鉱物つまり結晶の集合体である。それも針金程柔らかくないが伸びたりねじれたりすることができる。この性質は粘性という。鉱物の粘性は温度が1000度を越えると急に小さくなる。そして小さな力でも長い時間力を加え続けると変形していくのである。やや深いマントルでは温度は1200度以上もあり、長い時間かかってゆっくりと流れている。それがマントル対流だ。

 

3.5.2 地殻・マントルの破壊―地震と断層

2007年の能登半島沖地震には驚かされた。その前の中越地震にも驚かされた。そして1995年の阪神淡路大地震も予想されない地震であった。つまり内陸の地震はどのように起こるかよく判らないのである。判っていることはこうした内陸の地震は断層が原因であるということである。断層は地殻の中にできた食い違い面である。阪神淡路大地震のときには淡路島の野島断層が動いたことは有名である。アメリカ西海岸に沿ってロスアンジェルスからサンフランシスコにかけて走っているサンアンドレアス断層もよく知られている。

日本列島には多数の断層があり、普段は癒着していて動かないが、歪みがたまるとその断層面で破壊が進む。破壊するときのひずみは断層面の摩擦の強さによって変化する。摩擦が小さいと少ない歪みで断層が動き、大きな破壊は起きない。ところが摩擦が大きいと、大きな歪みが蓄積し、断層面で破壊して大きな地震を起こしてしまうのである。

地殻に歪みが蓄積するのは、ちょうどスプリングを縮めるようなものである。押して縮んだ長さ分を、元のばねの長さで割った値を歪みという。押す力はこの歪みの大きさに比例している。これがばねの法則である。断層面が動くときには、蓄積した歪みを放出するので、大きな歪みであるほど大きな力が放出されることになる。日本列島にはプレートが沈み込んでいることで歪みが蓄積する。その歪みが東北地方の地殻を東西に圧縮する力なのだ。

東北地方の地殻には南北に断層が並んでいる。歪みが蓄積し、力が増大していくと、その押す力が断層面の摩擦力を越えた時に破壊し、地震となってエネルギーが放出されるのである。西日本では押す力は東西のままであるが、断層が南東や北西の方向となっている。そこが違うのである。

プレートの境界は食い違い面でもある。その面を境としてプレートが斜めに沈み込んでいるが、この面にも摩擦があり、プレートの動きで増大する力が摩擦力を越すと、境界面で断層運動が起こり、地震が発生する。こうした地震を境界型地震と言っている。1929年の関東大地震、1946年の南海道地震、2005年の十勝沖地震などはこの巨大なもので境界型巨大地震と呼んでいる。

境界型巨大地震は、1回の地震で100 km ×100 kmほどの大きな破壊面がつくられる。むろん一瞬でそれだけの面積が割れるのではなく、所々引っかかりながら割れ目が進む。こうした境界地震はたいてい同じ場所で発生している。そして境界地震が起こらない部分は、今までは空白域として将来地震が起こるだろう地域と考えていたが、今では滑っていて地震が起こらない、つまり摩擦が小さい領域であると見られている。

島弧の地殻で起こる地震は、地下10-20 km付近で起こり、それより深いところではほとんど起こらない。これはなぜか。岩石はゆっくりと力を加えると曲がったり、流れたりする。この性質は温度が低いと次第に失われる。そして壊れやすくなるのである。そこである温度以下では岩石は流れずに割れてしまうことになる。岩石が割れるか流れるかの条件の違いが10-20kmの深さにあるのである。つまり地殻のやや深い所では破壊せずに流れてしまっているのだ。

【コラム2】震度階とマグニチュード

地震は地面に大きな揺れをもたらす。人が感じ被害が出るのはこの揺れである。地震のエネルギーは同じであっても遠く離れた場所では揺れは小さい。揺れの強さは震源から遠くになるにつれて、小さくなっていくためだ。そこで地震の規模をあらわす共通のものさしとして、地震のエネルギーを考え、それの強さを、地震計に記録された波の振幅の対数をとり、地震の震源からの距離を補正する。そこで同じ距離では、マグニチュードが1つ大きいと30倍ほどのエネルギーをもつ地震を表すことになる。一方、震度階はその場での揺れの強さで測る。0はほとんど感じない程度の揺れ、6は人が立っていられない程の揺れの強さである。一方マグニチュードは巨大地震では7以上になる。微小地震は3以下である。

 

3.5.3 マントルの融解―火山はマントルの窓

2000年6月26日、伊豆諸島の三宅島が突然噴火した。大規模な噴火で、たくさんの火山灰や溶岩そして火砕流が流れ下った。しばらくして8月には中央の火口が直径400 mぐらいにわたって円形に落ち込み、カルデラを造ったのである。

火山噴火には、マグマそのものの噴火とマグマが地下水にあたって起こる水蒸気の爆発とがある。噴火の仕方も、爆発的な噴火と静かにマグマを噴出する噴火がある。三宅島や雲仙普賢岳では爆発的な噴火をおこし、しばしば火砕流が発生した。ハワイのキラウエア火山やイタリアのストロンボリ火山は静かに噴火する。1100度もあるマグマが火口や斜面から連続的に噴出し、溶岩流が流れ下る。その早さは時速数十キロメートルにもなる。

沈み込み境界の火山活動では安山岩のマグマが多量に噴出する。一方の海嶺では玄武岩質のマグマを噴出する。安山岩マグマは粘度が高く、水を多く含んでいてたくさんの水蒸気などの泡を作り出す。このため、よく振ったビールを開けるときのように、火山の噴火口から爆発的に噴火するのである。一方のハワイのキラウエア火山では粘度が低く、水のようなマグマなので火口や割れ目から連続的に噴出する。

火山噴火には巨大噴火もある。たとえば、エーゲ海に浮かぶサントーニ島や太平洋のクラカトア島だ。前者は紀元前1500年ごろ、後者は1883年の巨大噴火で、火山全体が吹き飛んでしまった。最近でも1995年に起こったフィリピンのピナツボ火山の大噴火がある。そのとき大量の火山灰が大気に撒き散らされ、5年以上にわたって大気中に非常に小さい火山灰が残存し、地球環境に大きな影響を与えた。このように一つの火山でも大規模に噴火すると地球規模の環境変化を引き起こす。そしてそれは人類にとっても重大な脅威となりうるのである。

火山噴火は地下からマグマが地表に噴出することだ。なぜマグマが出来るのか。地殻やマントルは固体の岩石である。岩石が融解するということがマグマ発生である。岩石が融解するには三つのことが考えられる。ひとつは温度が上がること、二つ目は温度が保たれて圧力が下がること、そして三つ目は水が混入することである。深さ100 kmぐらいで1100度に達するマントルの岩石が、マントル対流に乗って10 kmぐらいにまで上昇すると融解するのである。一方で、水が混入すると岩石は低い温度で融解する。ちょうど水に塩をいれると氷結温度が低くなるのと同じで、凝固点降下現象が起きるからである。

海嶺やハワイ島などの火山活動では対流にのって高温度のマントルが上昇し融解している。一方、日本列島のように海溝に沿う弧状列島の火山噴火では、沈み込むプレートが脱水して放出された水が、日本列島の下に横たわるマントルにしみこみ、そのためマントルの岩石が融解してマグマを造っていたのである。このように火山噴火はマントルの物質と運動を透かす窓なのだ。

 

3.5.4 地震波によって見える地球の内部

地球の中は、星のように光で観測はできない。しかし、地震の波は地球の内部をよく伝わるので、それをつかって地球の内部の物質やその状態を観測することができる。地球の内部では深くなるにつれて温度や圧力が大きくなる。そのためいろいろな深さで地球を作る鉱物が変化する。地震の波が伝わる速度は、岩石の種類やその状態(温度や圧力)によって変化するので、地震波の速度を調べることによって地球の内部を探ることができるのだ。

地震波は音の波である。それは地球の中で岩石が断層などの割れ目にそってずれると、そのずれが地殻やマントルに沿って伝わっていく波である。それには縦波と横波がある。縦波は、岩石が縮まったり、伸びたりする波であり、横波はずれの動きが伝わる波だ。縦波は横波より速度がおおきいので、さきに到達し(プライマリー波、P波と呼ばれる)、横波は後から到達する(セカンダリー波、S波と呼ばれる)。それぞれ鉱物によってそれらの速さも違い、その比も違う。

お風呂の中から手の指を半分ほど出すと、指が折れているように見えてしまう。これは光の波が水の中と空中では速さが違い、そのために屈折するためだ。地震の波でも同じように速さが違うところを通過すると屈折する。ところで地震の波は、おおまかには地球の中では深くなるほどその速さは大きくなる。このため、初めは下に向かう地震波はしだいに曲がって進み、地震の発生地点(震源と呼ぶ)から一定程度離れた所で観測される。そこで震源から様々な距離にある地点に地震の揺れが到達する時間を測ると、違う深さの波の速さを知ることができる。こうして地球の中で地震波の速度が変化する様子が測られた。すると30 km、410 km、660 km、そして2900 kmの深さで地震波速度が急に大きくなった。それぞれは地殻とマントルとの境界、上部マントルとマントル遷移層との境界、マントル遷移層と下部マントルとの境界、そしてマントルと核との境界である。

急激な変化は鉱物が違うことに由来する。いろいろな深さで違う鉱物が地球を作っていたのだ。それは、圧力が増加して密度の大きい鉱物に変化していることである。後に実験で調べると410 kmと660 kmの不連続面がそれであった。しかし、30 kmと2900 kmの深さではそれぞれ地殻とマントルとの境界とマントルと核との境界であり、化学成分が大きく変化する。そして、横波が伝わらないので、外核は液体であった。

地震波による地球内部の探査は、全世界的にネットワークとして張られた高精度の地震計を用いて、速さのゆらぎの大きさでマントルや地殻内部をマッピングすることができるようになった。その結果、驚くべきことに、冷たく日本列島の下に沈み込むプレートの姿や、それが500-600 kmのマントル遷移層に滞留する姿、そして海嶺のマントルや日本列島などのマントルに速度の遅い領域が見えたのだ。それらはプレートやマントルがどのように運動しているかを明らかにしたのである。マントル対流とその中でマグマが発生している様子を見せていたのだ。

 

3.5.5 プレート運動と希少金属の濃集

火山噴火や地震活動などが頻発するプレート境界の地殻では、沈み込むプレートから脱水した水や、地表の河川水や海水などが岩石の内部にしみこんでいる。このような水は岩石にわずかに含まれているいろいろな元素をイオンとして溶かし、広い範囲にわたって岩石の中を循環することで次第にイオンの濃度を大きくする。この水溶液が地表水と混ざり合うと、温度が下がり、水素イオン濃度が変化し、溶け込んでいた金属イオンは鉱物となって岩石のなかの割れ目などに沈殿する。その過程は、通常の岩石ではしばしば1億分の1ぐらいしか含まれていない金などを1万分の1以上に濃集させる。このような岩石が銅や鉛、そして亜鉛、などの非鉄金属資源やレアメタル資源なのだ。

地殻には微量しか含まれていない元素が、所々濃集する現象はいろいろな時代のプレート境界で起こっている。日本列島だけでなく、南北アメリカ大陸の太平洋岸に沿う部分では過去3億年以上にわたって海洋プレートとの境界であった。また、アジア大陸の内部には4億年から2億年にかけて長大なプレート境界であったと考えられている山脈が連なっていて、こうした過去のプレート境界に沿って、長い時間かけて作られた豊富な金属資源が分布している。いろいろな地質時代のプレート境界の探査は新たな有用資源の探査という意味でも重要である。